犯罪の被害にあっても、現行犯ではなく通報も無い場合などは、警察も犯罪の存在を知ることは困難です。
そこで、警察に捜査をして犯人を逮捕して欲しいと思ったときに警察に出すのが被害届です。
けど、「告訴してやる!」とか「告発してやる!」とかいう言葉を耳にしたことがある人も多いと思いますが「被害届出してやる!」って聞いたことないですよね?
では、告訴、告発とは何なのでしょうか?
被害届と告訴・告発の違い、提出先やなかなか受け付けてくれない理由などについて書いていきたいと思います。
目次
被害届と告訴と告発の違いを教えて!
先ほども言いましたように被害届とは警察に捜査をして犯人を逮捕して欲しいときに警察に申告するもので、最もポピュラーな方法です。
被害届の書類は最寄りの警察署にも交番にも常備されています。
では、最寄りの警察署に出向き、被害届を書いて提出したら、それで警察が直ちに捜査を開始してくれるのでしょうか?
答えは〝No〟です。
被害届の受理は〝捜査の端緒(たんしょ)〟といって、あくまでも〝捜査開始の原因となるもの〟の一つに過ぎず、実際に 捜査するかしないかは警察次第 になってしまいます。
被害届は警察にとってとても都合の良い書類で、警察が必要と考える場合のみ捜査すれば良く、逮捕状請求時などにはその証拠とすることもできるんです。
ですから放置していても特にお咎めがないんですね。
対して告訴の場合、告訴状を受理したら捜査機関である警察は捜査を開始しなければならず、検察に捜査書類等を送付する義務も発生しますし、終局処分の判断は上司決裁になってしまいます。
つまり、 負担がとても大きくなる んですね。
そして検察は起訴(公訴提起)をした時もしない時も、その通知を告訴人にしなければなりませんし、また起訴しない場合、告訴人から請求があればその理由も通知しなければいけません。
あと、告訴には処罰を求める意思表示があるのですが、被害届にはそれがありません。
次に告発ですが、これは告訴と同じです。
何が違うのかというと、申告する人が違うのです。
犯罪の被害者や法に定められた親族等が申告するのが告訴で、被害者ではない第三者が申告するのが告発です。
この違いは簡単ですね。
●こんな言葉も分かるようで分かりにくいですよね?
⇒ 容疑者や被疑者は犯人とは違うの?逮捕後の呼ばれ方と報道のルール
告訴状の提出先は警察がダメなら検察でも可能?
告訴状の提出先は、まず警察があります。
警察には管轄がありますが、法律上は管轄区域外であっても受理しなければならない事になっていますが、実質、受理されませんし、されたとしても適切な捜査をしてもらうには管轄の警察署に行うのがベストでしょう。
ちなみに被害届は交番でも可能ですが、告訴・告発は受け付けてもらえません。
告訴・告発の方法は、検察官または警察・司法警察員に対して書面または口頭で行うとされていますが、実際問題口頭では、具体的な犯罪事実や被害内容等などの詳細な説明は困難ですし、手続きの明確性からも書面であることが望ましいです。
といいますか後に述べますが、ただでさえ受理されにくい告訴や告発を口頭で受理して貰うの、はほぼ不可能でしょう。
ちなみに司法警察員とは警察内で言えば原則は巡査部長以上の警察官のことです。
先ほど検察官という言葉が出てきました。
そう、告訴や告発は検察官(検事)のいる検察に対しても行うことが出来ます。
ただ、あまり検察への告訴や告発は一般的ではありません。
警察には告訴状に対する捜査義務がありますが、検察にはない んですね。
HEROのキムタクのように、一市民の小さい事件を捜査する検事さんは存在しないでしょう。
確かに法律上は警察でも検察でも告訴も告発も出来るのですが、まともに受け付けて貰えないから申告先を警察から検察に替えるというのは、本末転倒のような気がします。
受理して貰えないのなら、どのようにして受理させるかを考えた方が良いのではないかと・・・・
ただ、独禁法違反や関税法違反など、法律で告発先が検察官に特定されている事件もありますし、選挙絡みの事件や高度な専門知識が必要となる事件などは検察庁に対して行う方が良いかもしれません。
あと、事件関係者に警察官がいる場合なども検察に告訴する方が良いかもしれませんね。
ちなみに労働法関連の事件については労働基準監督署へ告訴・告発を行います。
告訴状が不受理となる理由
告訴状や告発状が提出されたら警察は受理しなければなりません。
これは法律ではないのですが、警察の規則である〝犯罪捜査規範〟というものに定められています。
しかし、実際問題は素人が告訴状などを提出しても不受理の嵐なんですね。
これはいったい何故なのでしょうか?
原因はいろいろあります。
捜査機関側は、重大事件や社会的に注目の高い事件を重視しますので、暴行罪などの小さな事件や証拠が少ない事件は、捜査を行う人員が少ないこともあり嫌がります。
刑事事件となる内容であっても、被害者が示談交渉を有利にすすめるたもの手段として使っているように見える場合は、民事で解決するように勧められます。
被害届や告訴を受理しないことで、手の回らない事件を事件として扱わなければ分母が減るので検挙率も上がります。
犯罪が実際に存在していても、告訴状、告発状が要件を満たしておらず受理されないことも多いでしょう。
また、そもそも犯罪だと思っていても犯罪ではないような場合もあります。
どうしても告訴したいけど受理されない場合、弁護士に依頼すれば③や④のようなことはないでしょうし、①や②の場合でもすんなり受理されたりもします。
また、議員や地元の有力者を通すと軽微な事件でも簡単に受理されるなんてこともあるようです。
自分で告訴するのは無理そうだという方は刑事事件に強い弁護士さんに相談してみましょう。
ここ大事です!
必ず〝刑事事件に強い〟弁護士に相談するのです。
弁護士なら何でもいいわけではありません。
なんとしても自力で告訴したいのであれば、不受理の理由を明確にすることです。
まずは、しっかりと理由を聞き、納得の出来る説明を受けましょう。
この辺は、多少の交渉力は必要にはなってきます。
告訴状が受理されないときの苦情の申出先は?
しっかりと要件を整えた告訴状を出しており、いくら確認しても不受理の理由も明確でないときは苦情を申し出るのも一つの手です。
苦情はそこまでやってはじめて行います。
そんな告訴や告発じゃ受理されなくて当たり前といった段階での苦情は控えるべきです。
実際の苦情の申し出先は、以下の2つが有力かと思います。
● 監察官
警察や警察官の不祥事や服務規程違反などに対する調査や取り締まり、監視や監査などを行う独立した機関です。
警視庁や各道府県警本部に設置されています。
● 公安委員会
警察職員の職務執行について苦情がある者は、都道府県公安員会に対して文書により苦情の申出をできることが警察法第79条に明記されています。