個人的に運営しているブログやホームページ、そしてSNSなどに動画を載せる人も多いと思います。
そして、その動画は自分で撮影した動画ではなく、YouTubeなどの動画を共有して貼っている方も多いでしょう。
そして、その動画はリンクを貼っているだけのこともあれば、埋め込み動画の形を取っていることも多いと思います。
これって著作権に引っ掛かってこないんでしょうか?
目次
YouTube動画をブログやSNSに貼ると著作権侵害?
YouTubeなどで公開されている動画って、何気なく自分のブログ、FacebookやTwitterなどのSNSに貼っていますよね?
これって、「著作権なんか知らん!」って人も多いと思いますが、ちょっと気になりながらも貼ってるって人も結構いるようです。
そもそも、埋め込みコードとか共有ボタンなんてのがあるくらいなんで、「いいんじゃないの?」って思いますが、ちょっとはっきりさせておきましょう。
とりあえず結論を、簡単に書きます。
● ただし、その動画が明らかに著作権を侵害している違法アップロードであれば、著作権侵害の幇助となるので、やはり違法となる。ちなみに幇助罪は著作権法ではなく刑法上の罪となる。
● 違法アップロードか明らかでない動画を共有しても違法にはならない。
● 著作権者から、動画の共有に対する抗議を受けた場合、直ちに動画を削除する等の対処をすればOK
それでは、上記の結論の根拠となる裁判例をご紹介したいと思います。
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ニコ動の動画を無断で共有した事例紹介
平成25年6月に大阪高裁で興味深い判決が出ています。
分かりやすく内容を書きますね。
この人を仮に〝裸くん〟とします。
この裸くんの行動どうこうは、今回の本筋から外れるので置いときます。
裸くんはこの裁判の原告、つまり訴えている人です。
そして、この動画のうち、裸くんのマクド入店直前から交番に連れて行かれて注意を受けるまでの約15分間を、何者かがニコ動に転載し(誰かは分かっていません)、その転載されたニコ動の動画を、この裁判の被告、つまり訴えられた側の株式会社ソシオコーポレーションが、自社の運営するウェブサイト〝ロケットニュース24〟に無断で掲載したのでした。
ちなみに、記事の末尾には「参照元:ニコニコ動画」と記載していました。
このロケットニュース24を運営する会社側を、ここでは〝ロケットニュース〟と呼ぶことにします。
これを見た裸くんは、自分が著作者である動画を無断で掲載したことの他、誹謗中傷する記事を載せたことなどは、裸くんの名誉を毀損すると共に著作権(公衆送信権)と著作者人格権(公表権、氏名表示権)を侵害するとして、ロケットニュースに対し、ウェブサイトへの謝罪文の掲載と、損害賠償の請求(確か120万円くらい)などを行ったのでした。
この裁判のポイントは、ロケットニュースがニコ動の埋め込みタグを使って動画を貼り付けたことが、著作権と著作者人格権の侵害になるかと、誹謗中傷的な記事やコメントを削除しなかったことが名誉毀損となるかどうかでしたが、一番気になるところは、ニコ動の埋め込みタグを使った動画の貼り付けが著作権(公衆送信権)の侵害となるかどうかです。
そして裁判所は、埋め込みタグを使った動画の貼り付けは著作権侵害にはあたらないと判断したのでした。
理屈は以下のような感じです。
● ロケットニュースの動画データは、ロケットニュースのサーバーに保存されたわけではなく、ロケットニュース閲覧者が記事上部にある動画再生ボタンをクリックしても、ロケットニュースのサーバーを経ずに、ニコ動のサーバーから直接閲覧者へ送信されている。
● 閲覧者が視聴している端末では、リンク元であるロケットニュースで裸くんの動画を見れる状態になっていたとはいえ、この動画データを端末に送信する主体はあくまでニコ動の管理者であり、ロケットニュースが送信していたのではない。
● だから、ロケットニュースが裸くんの動画を自動公衆送信した、あるいは送信可能化としたとは認められない。
もっと噛み砕いて言うと、例え埋め込み動画であっても、動画をコピーして貼り付けたのとは違い、閲覧者はロケットニュース上にある動画の再生ボタンを押して、ニコ動から動画配信を受けているから、動画を送信しているのはニコ動ってことです。
つまり、ニコ動やYouTubeの動画を共有してタグを貼ることは、著作権法上べっちょないってことです。
共有元の動画が違法動画だと・・・
動画共有がOKだとしても、ニコ動やYouTubeにアップされている動画がそもそも著作権を侵害している場合、これにリンクを貼るのは著作権侵害の幇助(手助け)となります。
分かり易いのが録画したテレビ番組をアップすることです。
テレビ番組の著作権は、放送したテレビ局の他、様々な人や会社が権利を持っています。
これを、権利を持っている所がアップロードするのであれば問題ないのですが、関係のない第三者が録画したテレビ番組をYouTubeなどの動画共有サイトにアップロードすることは、完全に著作権を侵害している状態なので、その動画を共有すれば著作権侵害の幇助となるわけです。
ちなみに、録画した番組を自分で見るだけの場合は、著作権制限規定が適用されてOKです。
そして、話は裸くんとロケットニュースの裁判に戻ります。
裸くんのマクド入店動画は、自分でニコ生にライブ配信したものでしたが、ニコ動にアップしたのは、裸くんでもロケットニュースでもない第三者でした。
ちなみに、この第三者は誰なのか明らかになっていません。
ということは、裸くんの著作物であるマクド入店動画を、誰かが無断でニコ動にアップしているといるので、これは違法アップロードということになります。
すると、ロケットニュースは違法アップロードされた動画を共有しているので著作権侵害を幇助している(助けている)ことになります。
つまり、アウトですよね。
けど、この裁判の判断は、ロケットニュースはアウトではなくセーフでした。
理屈はこんな感じです。
● 上記のような著作物にリンクを貼ることが直ちに違法になるとは言い難い。
● ロケットニュースでマクド入店の動画を視聴可能としたことについて、裸くんから抗議を受けた時点(つまりニコ動へのアップロードが著作権者に無断で行われていたことを認識した時点)で直ちに動画へのリンクを削除している。
● このような状況から、ロケットニュースに裸くんのマクド入店動画を貼ったことは、裸くんの著作権を侵害するものとはいえないし、第三者の著作権侵害について、これを違法に幇助したものでもなく、故意も過失もあったとはいえないから不法行為とならない。
つまり、著作権者からOKが出ているかどうか分からない動画にリンクを貼る行為は違法とはならず、著作権者から抗議があるなど、どの動画が著作権を侵害していると認識した時点で削除すれば、責任は問われないってことですね。
ですから、繰り返しになりますがテレビ番組の録画をアップロードしているなど、明らかに著作権を侵害している動画のリンクを貼れば、完全にアウトということです。
音楽だって同じことが言えますよ。
ちなみに、映画を盗撮したものをアップロードした動画はもちろん著作権を侵害していますし、そもそも映画の盗撮行為自体が〝映画の盗撮の防止に関する法律〟に抵触してきます。