サッカーの審判補助システムで、VAR(ヴイ・エー・アール)というものがあります。
2018 FIFAワールドカップ ロシア大会で導入され、注目を集めました。
今日は、このVARについていろいろ書いていきす。
10項目くらいに分けて書いています。
下の目次のタイトルをクリックすると、そこに飛ぶので、興味のあるところを読んでください。
目次
サッカーのVARとは?
〝VAR〟とは、Video Assistant Referee(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の略で、 ビデオモニターを見ながら必要に応じて主審に助言を行う審判 のことです。
そう、何かビデオの事と思っている人も多いようですが、違います。
〝VARとは審判〟のことなんです。
ロシアワールドカップでは、審判1人、アシスタント・レフェリー3人、リプレーオペレーター4人がスタジアム外で常に数台のモニターで試合を監視し、ビデオ判定を行うべきだと判断した時に主審に伝える形です。
ロシアW杯のVARの審判達は競技場にはおらず、モスクワの国際放送センター(IBC)内に設けられたビデオ集中運用室におり、主審へは無線で伝えます。
ここで、全会場の試合を追っているんですね。
今回のロシアW杯の主審は皆、耳にインカムを付けていますよね、あれでコミュニケーションを取っているんです。
ちなみに、ビデオチェックに使用された時間はアディショナルタイムに加算されるので、主審は時間を掛けて正確に判断出来ますが、正直、試合の流れというものは止まってしまいます。
2018年3月3日にサッカーのルール制定などを定める機関であるIFAB(国際サッカー評議会)にて可決されたVARハンドブックにも「VAR制度の目的は全ての判定に100%の精確性を実現する事では無い。それは試合の流れとフットボールの感情を破壊することであり、最小限の介入で最大限の効果がVAR制度の哲学である。」と記されています。
VARのビデオ判定の対象は?適用のルール
先ほども軽く触れましたが、VARを導入することで試合の流れは止まってしまいますし、多用するとゲーム自体がつまらなくなるでしょう。
そういった理由もあってか、VARが全ての判定に用いられるわけではありません。
そう、VARの使用用途は4つに絞られているんです。
その4つは以下の場合。
ゴールラインを割ったかどうか。GLT(ゴールライン・テクノロジー)により明確に判定できる
ペナルティエリア内でのファールについて
レッドカードの適用の可否
そもそも主審が対象の選手を間違っているとき
上記の試合結果に影響を及ぼすような4つの場合で明白かつ確実な誤審があった場合にだけ、判定に介入することになっています。
何でもかんでも〝確実な誤審〟なら使用されるのではないんですね。
しかし大事な事は、 ビデオ判定をするかどうかも、最終的なジャッッジもあくまで主審 であるということです。
VARを導入するとき
VARを使用するタイミングはアウトオブプレー、つまりプレーが止まったところで主審が判断します。
主審がVAR担当審判とコミュニケーションを取る際は、主審は耳に手を当てるサインをし、VARの確認をすると判断したときは、四角くモニターを描くジェスチャーをします。
選手や監督はVARを求めれる?チャレンジシステムとの違い
他のスポーツのビデオ判定だと、テニスやバレーボールなどにチャレンジシステムという制度があります。
チャレンジシステムは、回数制限を設けて選手側からビデオ判定を求めるものです。
一方VARは、主審の判断で使用するかどうかを決めるという点で大きく違います。
VARの審判達がどれだけしっかり見てくれるかですが、明らかにファールを受けたのに、そのまま試合が流れている場合、VARを求めたくなるかもしれません。
しかしサッカーでは、選手や監督が主審にVARでの判定を求めることは出来ず、求めた場合は イエローカードを出されるかも しれません。
一方、チャレンジシステムでは選手側から求めることが出来ますが、規定回数に達したら、その後に明かな誤審があっても、それを発動することが出来ませんし、どっちが良いとも言えませんね
大型モニターでの周知
ロシアW杯では、VARによる判定が行われた際はスタジアム内に設置されている大型モニターにそのシーンが映し出されます。
モニターには、問題のシーン、主審がビデオ確認をしている映像などが流れ、判定が変わった場合には改めてその情報がスタジアムの観客にも伝えられます。
この辺の運用については、大会や各国のリーグなどに委ねられる形になるようですから、どの試合でもそうという分けではありません。
VARの歴史
サッカー界にVARが初めて導入されたのは2016年のことでした。
そして、 初めて本格導入されたのは日本で開催されたクラブワールドカップ においてだったのです。
覚えていますか?
2016年12月14日、新しくなった吹田スタジアムで行われた、クラブワールドカップ準決勝の〝鹿島アントラーズvs.アトレチコ・ナシオナル(コロンビア)〟で、VARが介入したビデオ判定によるPKが行われました。
この事例は、主審がペナルティーエリア内での鹿島の西が受けたファールを見逃していたのですが、VARから「PKじゃない?」といった連絡が入り、主審がピッチ脇でビデオを確認し、PKの判定となり土居が蹴って、結果、鹿島の先制点となったのでした。
これがFIFA主催大会でのVARの初介入となったのです。
この試合は鹿島が3-0で勝利し、決勝に駒を進め、あのレアル・マドリードとの好勝負が繰り広げられたのでした。
そして2018年ロシアW杯で、ワールドカップでの初導入となります。
グループリーグから結構な頻度でVARは発動され、試合結果も左右していますね。
FIFA主催の大会だけでなく、世界の強豪リーグでも導入が始まっています。
今後、このシステムがどのように進化していくのか、あるいは衰退していくのか・・・
個人的には、試行錯誤してこのシステムをより良い物に昇華させていって欲しいですね。
VARの良いところと問題点 ~賛否両論~
新しい制度が導入されるときは、何でも賛否両論があるものです。
VARの場合、良い点はもちろん明かな誤審が減ることでしょう。
特にオフサイドであったかどうかなどは、ビデオでスローを見れば一目瞭然です。
● オフサイドについてはコチラで詳しく書いてます。
⇒ オフサイドってつまり何?一言で言うと?
ボールがゴールラインを割ったかどうかは、GLT(ゴールライン・テクノロジー)の威力が発揮されていますね。
これは、時間もかからず明瞭で、前回大会のブラジルワールドカップから採用されています。
今や、誰でもスマホで動画が撮れる時代。
TV中継のスローモーションも明瞭で、誤審は一時代昔よりも明らかに分かりやすくなっています。
それでも、判定っていうもは基本、覆らないですからね。
私もサッカーではなく野球でですが、ワンバウンドでスタンドにボールが入ったのにホームランになった明かな誤審を生で目撃したことがあります。
この判定は審判団が協議した結果、ホームランのままでした^_^;
これはプロ野球の一試合でしたが、その結果によって大げさではなく人生が変わる人もいるかもしれません。
そういう意味では、VARの導入はとても良いことかと思われます。
逆に悪い点、VARの制度に反対的な人の意見の代表格は、やはり試合の流れが止まることでしょう。
スピード感が失われてしまいますよね。
VARシステムで、試合が止まり、流れが変わることもあるかもしれません。
そもそも一試合に何回もこれがあれば、アディショナルタイムは相当長くなるでしょう。
●アディショナルタイムについてはコチラをご覧ください。
⇒ アディショナルタイムの決め方は?ロスタイムと何が違う?最長は?
VARの導入でファールの演技が減る?
サッカー、とりわけ海外(特に南米)のサッカーは、積極的にファールを受けた演技をする傾向があります。
シミュレーションという不正行為で、海外のサッカーでは当たり前にあるのですが、VAR導入によって限りなく減るのではないでしょうか。
それも含めてサッカーだという意見もあり、一流選手には一流の芝居が出来る選手もいますよね。
つまり、審判が見ていなければファールでもファールではないし、実際にファールではなくても、審判がファールと判断すればファールという本来のサッカーを、悪く言えば悪用しているわけです。
これについても賛否両論あります。
それも含めてサッカーを面白く感じている人もいれば、子供達が憧れるスーパースター達にそんな事をして欲しくないという人もいるでしょう。
VAR使用をデータで見ると
ロシアW杯開催までのVARの使用データはこんな感じです。
世界のトップレベル972試合での導入結果をベルギーの大学が検証。
しかし、ロシアワールドカップのグループリーグを見る限り、これよりも使用頻度は高く、遅延ももっと長いように感じます。
グループBのポルトガルvs.イランでは、実に4回もVARが使用されましたね。
また、VAR効果か、PK数がグループリーグの段階で、既に前回大会の数を上回っている状況です。
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