震度8は有り得ない?モーメントマグニチュード?長周期地震動の階級4?

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※北海道胆振東部地震(2018.9.6発生)を追加しました。

先日の熊本の地震、びっくりしました。
かなり大きな余震が続いていますが、これ以上被害が大きくならないことを唯々願います。

この度の地震は震度7が前震と本震の2回です。
阪神淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災に続く4度目と5度目の震度7です。

震度7・・・とんでもない地震ですが、これを超える震度8という地震は有り得るのでしょうか?

また地震が起こると耳にするマグニチュード、これは地震の規模を表すものですがモーメントマグニチュードという言葉も聞きます。何が違うのでしょうか?

そして熊本地震では長周期地震動が観測史上初の〝階級4〟でした。これは、いったい何なのでしょうか?

以上の三点を出来るだけ簡単にまとめておきます。

目次

震度8は有り得ないのか?

震度7の地震

繰り返しになりますが、日本で起こった震度7の地震と言えば、1995年(平成7年)の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)、2004年(平成16年)の新潟県中越地震、そして2011年(平成23年)の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、そして先日の熊本地震で前震と本震の2回あって合計5回です。

震度7と言えば、多くの建物が倒壊するイメージですが、震度ごとの揺れの状態については、気象庁のパンフレットをごらんください。
震度と揺れ等の状況(概要)

上記のパンフを見て頂ければ分かりますが、地震の揺れを表す震度は、現在では震度0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10段階が定められています。
つまり震度8はないんです。

これは気象庁が定めている〝気象庁震度階級〟というもので、日本で使用されている独自のものです。

ですから外国ではまた、別の震度階級がありその数値はイコールではありません。

元々は震度6までしかなかった!?

そもそも気象庁震度階級は6までしかありませんでした。

震度7が規定されるきっかけは、1948年(昭和23年)に起こったM7.1、震源の深さ0km、震度6の福井地震でした。

福井地震では福井市の一部で9割以上の建物が倒壊するという壊滅的な被害が出て、「震度6では適切に表現できないのではないか!」といった声があがり、翌年に震度階級が改正され、 震度6の中でも特に被害が大きい場合(家屋の倒壊率3割以上等)を震度7とする ことになったのでした。

ですから、このときの考え方ではどれだけ大きい地震がきても、それは震度6の中で被害が大きい地震というくくりの震度7までしか有り得ません。

震度6とされている福井地震や1923年(大正12年)の関東地震(関東大震災)はつまりは定義がなかっただけで震度7ってことですね。

この震度7を始めて記録したのが、震度7を定めてから47年後の兵庫県南部地震、つまり阪神大震災です。

震度計による観測へ完全移行

阪神淡路大震災のときは震度7だったことが判明するまで数日かかっています。

当時は震度計で震度6までの判定が出来るようになっていましたが、震度7だけは「家屋の30%以上の倒壊、山崩れ、地割れ、断層を生じる」などといった定義があったので被害の実態が判明しなければ震度7と出来なかったのです。

これを受けて、震度7も含めて震度計で算出するように震度の定義を再び改めたのでした。
この震度計による震度7を初めて記録したのが新潟県中越地震です。

ちなみに阪神淡路大震災以後、それまで8段階であった震度階級が震度5と震度6をそれぞれ強と弱の2つに分け(5弱、5強、6弱、6強)、10段階となります。
 

震度計の計測震度の数値と発表される震度の関係は以下のとおりです。

震度計測震度
震度00.5未満
震度10.5以上1.5未満
震度21.5以上2.5未満
震度32.5以上3.5未満
震度43.5以上4.5未満
震度5弱4.5以上5.0未満
震度5強5.0以上5.5未満
震度6弱5.5以上6.0未満
震度6強6.0以上6.5未満
震度76.5以上

上記表のように現行の気象庁震度階級では、震度計の計測震度6.5以上は全て震度7となります。
気象庁は震度8を設定する意味は無いと考えているのでしょう。

しかし、今までの震度階級制定の経緯からも、計測震度が7を超える地震が発生すれば震度7強、計測震度7.5を超える地震が発生すれば震度8を設定することになるかもしれませんし、また震度階級そのものを大きく改訂するかもしれません。

ちなみに今まで震度計で記録された最大の揺れは、東日本大震災時の〝計測震度6.67〟でしたが、熊本地震で益城町にて〝計測震度6.77〟が記録されました。
いずれにしても震度8の地震なんて、考えただけでも恐ろしいですね。

マグニチュードとモーメントマグニチュードの違いは?

〝震度〟とは、ある地点での揺れの大きさを表す数値ですので、1つの地震でも場所によって当然に数値はことなります。

対して〝マグニチュード〟とは、地震が発するエネルギーの大きさの数値であり、1つの地震にその数値は一つだけです。

マグニチュードが1増えると地震エネルギーは約32倍になり、 マグニチュードが2増えるとなんと1000倍の地震エネルギーに なります。
 

しかし1つの地震に1つの数値しかないはずのマグニチュードですが、異なるマグニチュードを目にすることがあります。

日本で使われているマグニチュードは〝気象庁マグニチュード(Mj)〟というものなのですが、地震学では〝モーメントマグニチュード(Mw)〟というものが広く使われているのです。

この違いについての詳細は全然簡単ではないので避けておきますが、つまりは算出の仕方が違うので、数値が微妙に違ってきます。
 

そして、昔から使われている気象庁マグニチュード(Mj)には大きな欠点が見つかりました。

それは、 M8を超えるような巨大地震の場合、マグニチュードを正確に表現できない ということでした。

巨大地震の場合、マグニチュードの値がある程度のところで止まってしまうらしいです。

そして、これを解決したのがモーメントマグニチュード(Mw)です。

ということは、当然、気象庁マグニチュード(Mj)よりもモーメントマグニチュード(Mw)を採用する方が正確だと思うのですが、気象庁は〝過去の記録との一貫性〟〝気象庁マグニチュード(Mj)とモーメントマグニチュード(Mw)はほぼ同じ〟〝気象庁マグニチュード(Mj)は速報が可能でニーズが高い〟といった理由で、今でも気象庁マグニチュード(Mj)を使っています。
 

ちなみに、過去最大の地震は(遡れる中で?)、1960年(昭和35年)のチリ地震で、モーメントマグニチュード9.5だそうです。
しかし、当時はモーメントマグニチュードはなくM8.5程度までしか算出できなかったとのことです。
 

以下に、阪神大震災以降の震度6強超えの地震のマグニチュード等を掲載しておきます。

地震発生日時地震名
又は震央地
マグニチュード
(Mj) 
(Mw)
最大
震度
震源の
深さ
1995.01/17
05時46分
阪神淡路大震災7.3 
6.9
716km
2000.10/06
13時30分
鳥取県西部地震7.3
6.8
6強09km
2003.07/26
07時13分
宮城県北部地震6.4
6.1
6強12km
2004.10/23
17時56分
新潟県中越大震災6.8
6.7
713km
2004.10/23
18時11分
新潟県中越で
余震
6.06強12km
2004.10/23
18時34分
新潟県中越で
余震
6.5
6.4
6強14km
2007.03/25
09時41分
能登半島地震6.9
6.6
6強11km
2007.07/16
10時13分
新潟県中越沖地震6.8
6.7
6強17km
2008.06/14
08時43分
岩手・宮城内陸地震7.2
7.0
6強08km
2011.03/11
14時46分
東日本大震災8.4
9.0
724km
2011.03/11
15時15分
茨城県沖で
余震
7.6
7.7
6強43km
2011.03/12
03時59分
長野県北部で
誘発地震
6.7
6.3~6.4
6強08km
2011.03/15
22時31分
静岡県東部で
誘発地震
6.4
6.0
6強14km
2011.04/07
23時32分
宮城県沖で
余震
7.2
7.1
6強66km
2015.04/14
21時26分
熊本地震の前震6.5
6.2
711km
2016.04/15
00時03分
熊本県熊本地方で
前震
6.4
6.0
6強07km
2016.04/16
01時25分
熊本地震7.3
7.0
712km
2016.04/16
03時55分
熊本県阿蘇地方で余震?誘発地震?5.86強10km
2018.09/06
03時07分
北海道胆振東部地震6.7
(6.6)
6強37km
 

長周期地震動の階級4って?

震度7を記録した熊本地震の余震で〝長周期地震動〟の大きさが、史上初めて最大の〝階級4〟を観測したようです。

けど、このニュースを見てもいまいちピンとこない人も多かったと思います。
 

地震が起きると様々な周期を持つ揺れ(地震動)が発生します。
 〝周期〟とは、揺れが1往復するのにかかる時間 のことを言います。

規模の大きい地震が発生したときに、この周期の長いゆっくりとした大きな揺れ(約2~20秒の地震動)が生じるのですが、このような地震動のことを〝長周期地震動〟と言い、高層ビルの高層階ほど影響を大きく受けます。

地上や低い建物では見られない〝船に乗っているような〟〝酔うような〟などと表現される揺れです。

長周期地震動の揺れは、規模が大きい地震ほど強く、震源が浅いほど伝わりやすく、短い周期の波よりも減衰しにくいことから、遠くまで被害が及びやすいという特徴があります。
 

気象庁の地震の揺れの尺度には、震度7までの10段階の震度階級の他、下表の4段階の長周期震動階級が設定されています。

階級人の体感と行動室内の状況
階級1室内にいたほとんどの人が揺れを感じる。驚く人もいる。ブラインドなど、吊り下げものが大きく揺れる。
階級2室内で大きな揺れを感じ、物に掴まりたいと感じる。物につかまらないと歩くことが難しいなど、行動に支障を感じる。キャスター付き什器がわずかに動く。棚にある食器類、書棚の本が落ちることがある。
階級3立っていることが困難になる。キャスター付き什器が大きく動く。固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがある。
階級4立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされる。キャスター付き什器が大きく動き、転倒するものがある。固定しない家具の大半が移動し、倒れるものもある。

この度の熊本地震で観測された階級4が史上初というのは、長周期地震動階級が設定されたのが東日本大震災の翌年の2012年であったからで、それ以前にそれ以上の揺れがなかったのではありません。
 

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まとめ

  • 熊本地震で震度7が2度観測されたが、これは史上4度目と5度目になる
  • 熊本地震以前に起こった震度7の地震は、阪神淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災の3回

  • 気象庁が定める震度階級は10段階の最大7で、震度8は規定されていない

  • 阪神淡路大震災当時の震度7は、震度計による計測値ではなく、震度6で一定の被害状況を超えるものと定義されていた

  • 現在の震度7は計測震度が6.5以上のとき全てで、計測震度が例え7.5を超えても震度8が定義されていないので震度7となる

  • 過去最高の震度計の計測震度は東日本大震災時の6.67だったが、熊本地震で6.77が記録された。

  • 震度はある地点の地震の揺れの大きさでマグニチュードは地震の規模を表す

  • マグニチュードが1増えると地震エネルギーは31.6倍、2増えると約1000倍となる

  • マグニチュードには気象庁マグニチュード(Mj)とモーメントマグニチュード(Mw)があり、気象庁マグニチュードは巨大地震の場合、正確に算出が出来なくなる欠点がある

  • 過去最大規模の地震は、1960年のモーメントマグニチュード9.5のチリ地震

  • 長周期地震動とは、ゆっくりとした大きな揺れで、高層ビルの高層階ほど影響が大きい
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    コメント

    • あの、、、計測震度は熊本県益城町が最高ではないですか?

      by 匿名 2016-08-07

    • >匿名さん

      そうですね。
      2つ目の震度7の方で、益城町と西原村のデータが送信されませんでしたが、現地でデータ回収した結果、益城町の計測震度は東日本大震災の6.67を超えていました。
      ご指摘ありがとうございます。

      by sanmon 2016-08-08

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